なぜ顔面神経麻痺の後に病的共同運動が起こるのか
- 2026年9月20日
- 顔面神経麻痺
顔面神経麻痺を発症すると、麻痺が回復する過程で「病的共同運動」が生じることがあります。病的共同運動とは、ある表情を作ったときに、本来は動く必要のない別の筋肉までいっしょに収縮してしまう状態です。
代表的な病的共同運動として「イーやウーと口を動かすと目が細くなる」「目を閉じると口角が動く」などがあります。病的共同運動は、損傷した顔面神経が再生する過程で生じる「過誤支配」の結果として生じます(過誤支配については後述します)。
正常な状態では、脳から顔面神経に送られた指令は適切な神経を通って目的の筋肉に伝わります。そのため、「眉毛を挙げる」「目を閉じる」「口角を動かす」などの動作は独立して行うことができます。しかし、いったん神経が障害され、顔面神経麻痺が生じると、脳からの指令が顔面神経に伝わりにくくなります。軽度の障害であれば、比較的速やかに神経は再生します。しかし、重度となり、神経の中心部にある「軸索」という部分が障害されると、障害を受けた部位より末梢側の軸索も変性します(これを「Waller変性」といいます)。わかりやすく表現すると、神経のある部分に重度の障害を受けると、そこから先の神経はいったん死んでしまいます。
ここから神経(軸索)の再生が始まります。損傷部から徐々に軸索の再生が起こりますが、再生は常に正確に行われるわけではありません。顔面神経は側頭枝、頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、頸枝に分かれ、さらに各神経枝が複雑に交差しています。特に、主に眼輪筋を支配する頬骨枝と主に表情筋を支配する頬筋枝は複雑に交差して神経のネットワークを形成しています。
神経再生の際に、再生した軸索の一部が本来とは異なる筋肉を支配することがあります(これを「過誤支配」といいます)。例えば、口元の筋肉へ向かうはずの軸索が頬骨枝側へ入りこむと、脳が口を動かすように指令を送ると、その信号が眼輪筋にも伝わります。その結果、口を動かすと同時に目が閉じるという病的共同運動が生じます。このように病的共同運動は主に過誤支配によって起こりますが、他にも脳の興奮性変化や表情筋の過緊張などの要因も関係することが報告されています。


監修 藤木政英(医学博士)
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科 院長
皮膚科学と形成外科学の両面から最善の治療を提供しています。
これまで大学病院、虎の門病院、国立がん研究センターなど、第一線の病院で勤務してきた経験から、医学的根拠に基づく誠実な医療を行うことを心がけています。特に形成外科・皮膚外科の日帰り手術、レーザー治療に力を入れており、短時間で終える治療は初診時に行うことができる体制を整えています(詳しくはホームページをご覧下さい)。
皮膚や形態、機能の病気で悩む方に、「より良い人生を送るための医療」を提供するためにクリニックひいらぎを開院しました。