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レーザー(LASER)とはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字を取ったもので日本語訳すると「誘導放出による光の増幅」となります。つまり、「特定の波長を増幅して発生させたまっすぐ進む光」という理解でいいと思います(正確には他の要素もあります)。その増幅させる波長はレーザーの機器によって異なります。

代表的な波長のレーザーとして以下のようなものがあります。
532nm:KTP
595nm:パルス色素レーザー
694nm:ルビーレーザー
755nm:アレキサンドライトレーザー
1064nm:Nd:YAGレーザー
2940nm:Er:YAGレーザー
10600nm:炭酸ガスレーザー(CO2)
※Nd:YAGレーザーの波長を532nmに変換したものなど、同じ機器から複数の波長を発生させる機器もあります。
ここで覚えていただきたいのは、「波長によって皮膚のどの物質に吸収されやすいかが異なる」ことと、可視光から近赤外線の範囲では「波長が長くなるほど皮膚の深い部分まで到達しやすくなる」ことです(例外はありますが省略します)。

この図は、光吸収曲線といって、物質によって吸収しやすい波長が異なることを示した図です。縦軸の上にいくほど吸収されやすいということです。特に皮膚のレーザー治療では、標的となる物質として「メラニン」「(酸化)ヘモグロビン」「水」の3つが重要です。
赤血球にはヘモグロビンという物質が含まれています。ヘモグロビンは特定の波長の光を吸収する性質があり、この性質を利用することで血管病変を治療します。Vbeamに代表される595nmの波長を有するパルス色素レーザーは、ヘモグロビンに吸収されやすい波長を利用しています。ただし、光吸収曲線を見て、あることに気付いた人もいるかもしれません。単に酸化ヘモグロビンへの吸収のみを考えるなら、400~500nmに吸光度のピークがあるため、この波長のレーザーを用いればいいということになります。実際に、488nmの波長を有するアルゴンレーザーというものが用いられていた時代がありました。しかし、ここで「波長が長くなるほど皮膚の深い部分まで到達しやすくなる」というレーザー光の特徴を思い出してください。400~500nmの波長は皮膚の血管病変を治療するには波長が短すぎるため、病変の血管にまでレーザーが届かないことに加え、皮膚の浅い層の血管に反応するため正常皮膚の損傷から瘢痕形成を起こすリスクがあり、現在では用いられていません。つまり、レーザーの波長を選択するときには吸光度のみではなく、治療対象となる物質の深さなども考慮する必要があります。現在は、595nmの波長を有するパルス色素レーザーが広く用いられています。レーザーが血液中のヘモグロビンに吸収されると、光エネルギーが熱に変換されます。
この性質を利用して、以下のような疾患を治療します。
毛細血管奇形(単純性血管腫)、乳児血管腫(いちご状血管腫)、毛細血管拡張症、酒さ、炎症後紅斑、肥厚性瘢痕・ケロイドなど
メラニンは、短い波長ほど吸収されやすく、波長が長くなるにつれて吸収率が低下する傾向がありますが、比較的幅広い波長の光を吸収します。そのため、代表的なレーザーとして、532nmのKTPレーザー・Nd:YAGレーザー、694nmのルビーレーザー、755nmのアレキサンドライトレーザー、1064nmのNd:YAGレーザーなどがあり、メラニンの深さを考慮して波長を選択します。例えば、表皮のメラニンを標的とするときは532nmなどのレーザーが用いられますし、真皮のメラニンを標的とするときは755nmや1064nmなどのレーザーが用いられることが多いです。
この性質を利用して、以下のような疾患を治療します。
太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、日光性色素斑、雀卵斑(そばかす)、ADM、肝斑など
皮膚には水分が含まれており、炭酸ガスレーザー(10600nm)やErレーザー(2940nm)は、水に強く吸収されるという特徴があります。こうしたレーザーが皮膚の水分に吸収されると、そのエネルギーが熱に変換され、それに伴い組織が除去されます(これを蒸散(ablation)といいます)。
この性質を利用して、以下のような疾患を治療します。
色素性母斑(ホクロ)、脂漏性角化症、表皮母斑、血管拡張性肉芽腫、アクロコルドン、静脈湖など
太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、外傷性刺青、いちご状血管腫、単純性血管腫
シミ(日光性色素斑、脂漏性角化症、雀卵斑、肝斑、ADMなど)、色素性母斑(ホクロ)、表皮母斑、汗管腫、眼瞼黄色腫、脂腺増殖症、毛細血管拡張症、血管拡張性肉芽腫、尋常性疣贅、アクロコルドン(首イボ)、肥厚性瘢痕、ケロイド、酒さ、ニキビ、ニキビ跡、脱毛など
※毛細血管拡張症は、一定の基準を満たす場合には本来保険適用ですが、保険診療における適用基準や審査が厳格であることから多くの医療機関では自由診療として治療を行っています。
レーザー治療の原理を説明するうえで、「選択的光熱融解理論(Theory of Selective Photothermolysis)」という重要な理論があります。この理論は1983年にAndersonとParrishによって提唱され、Scienceという有名な科学雑誌に掲載されました。
選択的光熱融解理論によると、選択的に病変の標的物質を破壊し、周囲の正常組織への熱損傷を最小限にするには、レーザー光が以下の3つの条件が満たさないといけないとされています。
①標的物質に選択的に吸収され、かつ標的物質の存在する深さまで到達できる波長である
②標的物質の熱緩和時間より短いパルス幅である
③標的物質に非可逆的損傷が生じるのに十分な照射エネルギーである
ただし、これではわかりにくいので、簡単に表現するとレーザー治療では「波長」「パルス幅」「フルエンス」の3つが重要であると理解するのがいいと思います。

最初に重要なのがレーザーの波長です。前述したように、メラニン、ヘモグロビン、水は、それぞれ吸収しやすい波長が異なります。そのため、治療したい病変に応じて適切な波長のレーザーを選択する必要があります。ただし、実際にはメラニンとヘモグロビンなどの複数の物質が同じ波長を吸収するため、波長だけで完全な選択性が得られるわけではありません。
パルス幅とは、レーザーのエネルギーを照射する時間のことです。
例えば、同じエネルギーを照射する場合でも、1秒かけて照射する場合と、100万分の1秒で照射する場合では、組織に生じる変化が異なります(時間をかけて焼いたステーキと急速に焼いたステーキでは変化が異なるイメージです)。
ここで「熱緩和時間」という概念が重要になります。熱緩和時間とは、レーザーによって加熱された組織の温度が熱の拡散によって約半分に低下するまでの時間です。一般的に、標的が小さいほど熱緩和時間は短く、大きいほど長くなります。例えば、メラニンを含む微小な構造物(メラノソーム)は熱緩和時間が非常に短いのに対し、血管はそれよりも長い熱緩和時間を持っています。つまり、メラニンは短い時間でジュッと焼いてしまえば熱が蓄積して破壊されるのに対し、血管はジューッとやや長めに焼かないと破壊されないイメージです。
レーザーのパルス幅を標的の熱緩和時間と同程度、またはそれより短く設定することにより、標的の周囲へ熱が拡散することを抑えながら、標的を効率的に破壊できます。逆に、パルス幅が長すぎると、標的に発生した熱が周囲の正常組織へ拡散し、熱傷や色素沈着などの原因になることがあります。このパルス幅をナノ秒(ns)まで縮めたものをQスイッチレーザー、ピコ秒(ps)まで縮めたものをピコレーザーと呼んでいます。
フルエンスとは、単位面積当たりに照射されるレーザーのエネルギー量で、通常J/cm2という単位で表します。
レーザーが標的に吸収されても、エネルギーが不足していれば十分な治療効果は得られません。一方、エネルギーが過剰であれば、標的だけでなく周囲の正常組織にも障害を与える可能性があります。したがって、治療に必要なエネルギーを確保しながら、正常組織への障害を最小限に抑えることが重要です。
10600nmという波長を有するレーザーで、水分への吸収率が高く、組織を蒸散させることができます。電気メスによる焼灼と比べて、組織を蒸散させる範囲や深さを厳密に調整できるため、早くきれいに治癒することができることが特徴です。熱凝固作用があり、周囲の血管が固まるため、出血はほとんどありません。脂漏性角化症などの表皮病変以外は局所麻酔が必要です。
炭酸ガスレーザーは組織を蒸散させてしまうため、病理組織検査ができないことが欠点です。そのため、ダーモスコピー(拡大鏡)で検査を行い、わずかでも悪性を疑う所見があるときは手術を行い、病理組織検査を行います。
レーザーを照射した当日は、軟膏を塗布し、ガーゼや絆創膏で覆います。
脂漏性角化症、色素性母斑(ホクロ)、表皮母斑、汗管腫、眼瞼黄色腫、脂腺増殖症、血管拡張性肉芽腫、尋常性疣贅、アクロコルドン(首イボ)、ニキビ跡
フラクショナルレーザーは、皮膚表面にごく小さな点状の穴を多数あけ、皮膚の再構築を起こすことで治療効果が現れるレーザーです。当院はルートロニック社のeCO2 Evolution(エコツーエボリューション)を用いており、レーザー照射径、出力、照射密度などを最適化しながら治療を行います。フラクショナルレーザーにはablative(蒸散型)とnon ablative(非蒸散型)がありますが、eCO2 Evolutionはablative(蒸散型)に当たります。

皮膚の質感改善(引き締め効果、ハリの改善)、キズ跡・リストカット跡、ニキビ跡、毛穴、こじわなど
イタリアのQuanta社製の最新型ピコレーザーである「Discovery PICO PLUS(ディスカバリーピコプラス)」を採用しています(国内承認機)。ディスカバリーピコプラスは、532nm、694nm、1064nmという3波長を有し、532nmと1064nmの2波長はピコ秒(ピコレーザー)とナノ秒(Qスイッチレーザー)で発振することができ、532nm、694nm、1064nmの3波長はナノ秒で発振することができます。つまり、最新のピコレーザーに加え、従来のQスイッチレーザーの機能を備えた次世代型のレーザーです。
3波長を組み合わせることによって、従来のレーザーでは治療が難しかった薄いシミや多彩な色のタトゥーなども治療できるようになりました。また、他のピコレーザーと比較し、均一な照射を行うことが可能であり、高い治療効果と合併症のリスクを軽減することができます。
主に「ピコスポット」「ピコトーニング」「ピコフラクショナル」「ルビーフラクショナル」「ジェネシス」の5つのモードを使用できます。

扁平母斑、太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青、日光性色素斑、雀卵斑、ADMなど
595nmという波長をもつレーザーで、血液中のヘモグロビンに選択的に吸収されることで、血管を内壁から熱破壊し、血管を閉塞させます。そのため、血管腫や毛細血管拡張症などの血管性病変を治療するのに用いられます。
Vbeam IIは、パルス幅(照射時間)を調節する機能があり、病変の血管径や深さに応じた治療を行うことができます。また、レーザーを照射する直前に皮膚を冷却する装置があり、レーザー照射の痛みを軽減し、熱傷などの合併症の頻度を下げることができます。痛みは軽く輪ゴムで弾かれる程度であるため、小範囲の病変では麻酔は必要ありません。
レーザーを照射した当日は軟膏を塗布しますが、特にご希望がなければガーゼなどで覆っていません(他のレーザーと異なり出血や滲出液がないため)。

いちご状血管腫、単純性血管腫、毛細血管拡張症、血管拡張性肉芽腫、尋常性疣贅、肥厚性瘢痕、酒さ、ケロイド、ニキビ跡など