クリニックひいらぎ皮膚科形成外科の藤木政英です。

TCAクロスとは、ニキビ跡に対する治療法の1つで、Trichloroacetic Acid Chemical Reconstruction Of Skin Scarを略したものです。高濃度のトリクロロ酪酸(TCA)を塗布することで皮膚の再構築を促します。液体による治療のため深いニキビ跡にも有効で、主にアイスピック型の治療に用いられています。しかし、TCAクロスはAcidという単語が含まれていることからもわかる通り「酸」の作用で皮膚に障害を与えます。

当院を受診していただいた方によく言われますが、私の手術はかなり細かいです。特にニキビ跡に対しては炭酸ガスレーザーを用いて0.1mm単位で瘢痕を削り、顔の輪郭や皮膚の状態を確認しながら削る範囲を微調整しています。ニキビ跡を極限まで目立たせなくするには0.1mm単位でのこだわりが必要と考えていますが、皮膚に酸を塗布するTCAクロスは障害を与える範囲や深さを微調整できないため、どうしても雑な治療に思えてしまいます。結果として、効果が乏しい、あるいは逆に悪化や色素沈着を起こすリスクがある(そして、そのリスクを医師がコントロールできない)ため、当院ではTCAクロスを採用していません。