「保険診療=最善の治療」ではないこともあります
- 2023年6月11日
- 皮膚腫瘍、皮下腫瘍
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科の藤木政英です。
保険診療は、疾病に対する長期的な有用性が確立しているものがほとんどであり、私はまず保険診療で行える治療を提案するようにしております。しかし、いくつかの疾患では保険診療の治療をお勧めしておりません。その1つが表皮基底細胞の異常によって生じる脂漏性角化症です。
顔などの露出部に多発することが多い脂漏性角化症を保険診療で治療するには冷凍凝固療法を用いることになります。冷凍凝固療法は-196℃の液体窒素で病変を壊死させますが、壊死させる組織の深さや範囲を厳密に調整できません。そのため、複数回の治療が必要になるだけでなく、写真のように瘢痕や色素沈着を起こす可能性が高いことが欠点です。表皮病変である脂漏性角化症は炭酸ガスレーザー(自由診療)で表皮のみ、あるいは真皮浅層までを削皮することで写真のように1度の治療で綺麗に治ります。費用も保険診療とほとんど変わりません。そのため、脂漏性角化症は保険診療(冷凍凝固療法)よりも自由診療(炭酸ガスレーザー)で治療することをお勧めしております。
しかし、2023/5/12のコラムで解説しましたが、皮膚腫瘍の治療で最も重要なことは正確な診断をすることです。実際に、皮膚科専門医や形成外科専門医が所属していないクリニックで、脂漏性角化症と誤診して皮膚悪性腫瘍をレーザーで治療した事例があるようです(皮膚悪性腫瘍を不適切に治療すると必ず再発し、その間に病気が進行します)。そのため、脂漏性角化症かなと思った方は、皮膚科、あるいは形成外科専門医に正しい診断を受けた上で、炭酸ガスレーザーで治療するのがいいと思います。
監修 藤木政英(医学博士)
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科 院長
皮膚科学と形成外科学の両面から最善の治療を提供しています。
これまで大学病院、虎の門病院、国立がん研究センターなど、第一線の病院で勤務してきた経験から、医学的根拠に基づく誠実な医療を行うことを心がけています。特に形成外科・皮膚外科の日帰り手術、レーザー治療に力を入れており、短時間で終える治療は初診時に行うことができる体制を整えています(詳しくはホームページをご覧下さい)。
皮膚や形態、機能の病気で悩む方に、「より良い人生を送るための医療」を提供するためにクリニックひいらぎを開院しました。