扁平母斑のレーザー治療は何歳頃に行うのがいいのか?
- 2024年3月20日
- レーザー治療
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科の藤木政英です。
扁平母斑は、茶あざと呼ばれることもある境界明瞭な茶色の色素斑です。多くの方は生まれつきありますが、出生後に目立ってくることもあります。
レーザー照射が第一選択の治療法ですが、扁平母斑のレーザー治療の最大の問題点は再発率が高いことです。成人の扁平母斑に対するレーザー治療後の再発率は8割と高く、著効するのは2割程度です(特に四肢は再発率が高いとされています)。幼児期の方が治療成績は良く、0歳児では5割が著効し、再発率は5割とされています。そのため、「扁平母斑はレーザー治療を早めに受ける方がいい」とのみ記載されているサイトや本があります。確かに扁平母斑はレーザー治療を早めに受ける方がいいと思いますが、治療時期を決めるのはそれほど単純な問題ではありません。
レーザーを照射する前にペンレステープという麻酔シールを貼りますが、3歳以下は2枚まで使うことができます。麻酔シール1枚の大きさが3×5cmほどなので、シール2枚分以内の大きさの病変であれば局所麻酔で治療することができます。しかし、局所麻酔で治療することができる大きさだとしても、レーザー照射中は眼を保護しますし、動かないように体も抑える必要がありますので、どれほど早くても私は首がすわる生後3~5か月以降に治療する方がいいと考えています。
麻酔シールを使うことができる範囲より大きな扁平母斑は全身麻酔下に治療することが選択肢になります。特に、3~7歳頃は治療に協力することが難しく、抵抗する力も強いので安全性、および治療がトラウマになることを避けたいという観点から全身麻酔下の治療が検討されます。しかし、子供の良性の病気に対して全身麻酔まで行うかどうかは一定の正解はないと考えます(以前のコラムもご参照ください 全身麻酔が子供の発達に与える影響|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|目黒区・池尻大橋駅 (clinic-hiiragi.jp))。そのため、大きな扁平母斑に対し、まずは局所麻酔で小範囲のレーザー照射を行い、半年~1年程度の経過観察後に再発しないようなら全身麻酔で扁平母斑全体に照射することも検討されます。
再発率という観点からは「扁平母斑はレーザー治療を早めに受ける方がいい」と言えますが、年齢や病変の大きさ、子供の性格、ご両親の考えなども含めて方針を相談する必要がありますので、レーザー治療に精通した皮膚科専門医、あるいは形成外科専門医に相談することをお勧めします。
監修 藤木政英(医学博士)
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科 院長
皮膚科学と形成外科学の両面から最善の治療を提供しています。
これまで大学病院、虎の門病院、国立がん研究センターなど、第一線の病院で勤務してきた経験から、医学的根拠に基づく誠実な医療を行うことを心がけています。特に形成外科・皮膚外科の日帰り手術、レーザー治療に力を入れており、短時間で終える治療は初診時に行うことができる体制を整えています(詳しくはホームページをご覧下さい)。
皮膚や形態、機能の病気で悩む方に、「より良い人生を送るための医療」を提供するためにクリニックひいらぎを開院しました。