基底細胞がん
基底細胞がん
基底細胞がんとは皮膚がんの一種であり、皮膚がんの中で最も頻度が高いものです。
皮膚は浅いところから表皮、真皮、皮下組織に分かれます。基底細胞とは表皮の最も深いところにある細胞であり、基底細胞がんは基底細胞や毛包を構成する細胞から発生します。紫外線や放射線などが発症因子と考えられており、多くは40代~高齢者に発症します。
基底細胞がんの悪性度は低く、早期に発見して治療することができれば転移や生命に関わることはほとんどありません。当院は、日本皮膚科学会の「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」に沿って基底細胞がんの診療をしています。
体中のどこにでもできますが、多くは顔などの露出部にできます。わずかに盛り上がった不規則な黒色の腫瘍として自覚することが多く、進行すると周囲の組織を破壊しながら大きくなり、中央部分に潰瘍ができ出血することもあります。まれに色素を持たず黒色ではない病変もあります。本邦では、結節・潰瘍型、表在型、斑状・強皮症型の主に3つに分類されます。
ダーモスコープという拡大鏡を用いて皮膚を詳しく観察することで診断します。ダーモスコープを用いても診断が困難なときは、皮膚の生検を行って確定診断をします。
ご本人は基底細胞がんであることを気付いておらず、ホクロなどと思って医療機関を受診することによって発見されることがほとんどです。安易にホクロと思わず、大きくなっている、少し盛り上がっている、濃さが均一ではないなどの症状があるものは医療機関で診察を受けることをお勧めします。
治療は、基本的に手術になります。放射線照射や化学療法が行われることもありますが、進行例や再発を繰り返す場合、(極めてまれではあるものの)転移した場合などの特殊な状況でのみ選択肢となります。
ホクロなどの良性腫瘍と異なり、基底細胞がんは不規則に周囲に広がっていることがあるため、病変よりやや大きめかつ十分な深さで切除します。切除範囲を小さくしてがんを取り残してしまうと再発を招き、さらに大きな切除が必要となるため十分な範囲で切除することが必須です。
切除する範囲は病変の部位や病型、大きさ、再発病変かなどによって判断します。ただし、単に大きく切除すればいいというものではなく、顔面にできることが多いため機能面や整容面も十分に考慮して手術を行います。切除後はそのまま縫合(単純縫縮)できることがほとんどですが、ときに局所皮弁や植皮(皮膚移植)を用いることがあります。
小さい病変は切除後にそのまま縫合して欠損を閉鎖します。
大きい病変や鼻、まぶた、眉間などに生じた病変はそのまま縫合することができないため局所皮弁や植皮(皮膚移植)という方法を用います。
ただし、大きい病変ではがんがきちんと取り切れているかを病理検査で評価する必要があります。そのため、病理結果が判明する1~2週間は人工真皮をかぶせるなどしていったん手術を終了することがあります。そして、病理検査でがんが取り切れていることが確認出来たら、2回目の手術で切除部位を再建します。
「がん」と診断されるとショックを受けられる方が多いですが、基底細胞がんの転移はごくまれであり、生命に関わることはほとんどありません。適切な切除を行えば再発率は1%未満です(そのため、基底細胞がんはがん保険の対象外となっていることも多いです)。
しかし、まれではあるものの局所再発(切除した部位に再発する)の可能性はあるため手術後は3~5年程度の経過観察を行います。
※手術費用の他に、診察料、病理検査料などがかかかります。
切除 | 約33,000円(3割負担) 約11,000円(1割負担) |
切除+局所皮弁 | 約48,500円(3割負担) 約16,200円(1割負担) |
切除+植皮 | 約66,000円(3割負担) 約22,000円(1割負担) |