熱傷(やけど)
熱傷(やけど)
軽いものを含めたら誰でも1度は経験したことがあると思います。しかし、適切な治療を行わないといつまでも治らないことや目立つキズ跡になることもありますので、単なるやけどと思わずに医療機関で治療するようにしてください。
皮膚は浅いところから表皮、真皮、皮下組織に分かれますが、表皮のみのやけどを1度熱傷、真皮に達すると2度熱傷、皮下組織に達すると3度熱傷と呼びます。さらに、2度熱傷は、真皮の浅いところまでの浅達性2度熱傷、真皮の深いところまで及ぶ深達性2度熱傷に分けられます。
1度は日焼けに近い状態なので、皮膚に赤みと腫れが生じ、ヒリヒリとした痛みがあります。数日で軽快し、跡も残りません。
2度になると水ぶくれと強い腫れが生じます。浅達性2度熱傷では、鋭い痛みを感じることが多く、水ぶくれの底はピンク色をしています。深達性2度熱傷では、浅達性ほどの鋭い痛みは起こらず、水ぶくれの底はピンク色と白色が混じったような状態になります。
3度になると水ぶくれは起こらず、皮膚は黒色、あるいは羊皮様といわれる白色になります。ここまで深くなると痛みを感じる神経も損傷しているので逆に痛みがなくなります。
やけどを受傷してしまったら、すぐに冷やすことが重要です。小範囲のやけどであれば急いで病院を受診する必要はありませんので、まずは10~30分ほど水道水の流水で冷やしてください。冷やすことで痛みは和らぎ、やけどが深くなることを防ぐことができます。
1度と2度は、手術をせずに保存的に治療をします。
やけどの治療の基本は、毎日処置をして清潔に保ち、乾燥させないことにより早期に治癒させることです。やけどの範囲を、泡立てたボディソープの泡で洗浄するイメージで、強くこすらないようにしてください。シャワーで洗い流し、清潔なタオルで水滴を拭きとって下さい。その後、処方された軟膏を(ガーゼが貼りつかないように)たくさん塗布し、メロリンガーゼやモイスキンパットのような貼りつかないガーゼ(非固着性ガーゼ)で覆います。非固着性ガーゼは薬局で購入することもできますし、院内でも販売しています。創部の状態に合わせて、創傷治癒を早めるフィブラストスプレーや創傷被覆材などを使うことがあります。
通常、1度は数日から1週間ほど、2度は2~3週間ほどで治癒します。毎日必ず処置をすることが重要です。自宅で処置をすることが難しい方や自信がない方はクリニックで処置をしますので毎日通院して下さい。
3度になると、保存的治療での治癒は期待できない、あるいは治癒するとしても数か月以上かかるため、手術が選択肢になります。
手術はすぐに行うのではなく、まずは3度の範囲の皮膚を切除(デブリードマンといいます)し、創部が治癒しやすい状況を作ります。その後、身体の他の部分から皮膚を移植する手術(植皮術)を行います。皮膚を採取する場所は、キズ跡が目立ちにくい鼠径部が代表的ですが、やけどの範囲と部位により最善の採取場所を選択します。
よく聞かれる質問であり、患者さんにとって当然の疑問だと思います。しかし、この質問に対して医師から明確な答えをもらえた人は少ないのではないでしょうか。医師が明確に答えない理由は「やけどの多くは経過を見ないとわからない」というのが本音だからです。
表皮には基底細胞という細胞があり、この細胞が細胞分裂することで表皮は再生されます(これを上皮化と言います)。上皮化が起こると跡を残さずに治癒するため、1度は「あとを残さずに治ります」と言うことができます。しかし、2度になると表皮の基底細胞が損傷されてしまいます。真皮には毛包や汗腺などの皮膚付属器と呼ばれる部分があり、基底細胞が損傷されたときはこの皮膚付属器が上皮化に関与します。そのため、2度は皮膚付属器が温存されていれば上皮化しますし、皮膚付属器が損傷していれば上皮化が起こりません。そのため、2度は「あとが残るかはわからない」と言うことになります(専門医はある程度の予測はできます)。さらに、皮膚付属器も全て損傷する3度は上皮化が起こらないため、手術が必要になりますし、「あとが残ります」ということになります。しかし、実際は、時間とともにやけどは深くなることがありますし、創傷治癒は体質、栄養状態、部位、血流、感染の有無などのさまざまなものに影響されます。
ここまで読んでいただけたら、「やけどの跡は残りますか?」という質問に対する答えが難しいことがわかっていただけたと思います。
※手術費用の他に、診察料などがかかります。
3割負担 | 30,000円 |
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1割負担 | 10,000円 |
3割負担 | 37,500円 |
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1割負担 | 12,500円 |
3割負担 | 84,600円 |
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1割負担 | 28,200円 |