女性化乳房症
女性化乳房症
女性化乳房症とは、男性の乳腺組織が肥大し、乳房が女性のように発育した疾患のことです。10000人に3人程度が発症すると報告されています。
男性ホルモンに対する女性ホルモンの割合が高くなると発症しますが、ほとんどの女性化乳房症の原因は不明です。
10代で発症したものの多くは生理的な変化であり、自然軽快が期待できます。20代以降で発症したものは、利尿薬・降圧剤・AGA治療薬などの薬剤、女性ホルモンを分解・不活化する肝臓の機能が低下、女性ホルモンを産生する腫瘍などの疾患などが原因のことがあるため、採血などの検査を行います。
乳腺が肥大したことによる女性化乳房症を真性女性化乳房症といいます。一般的に女性化乳房症と言われるものは真性女性化乳房症のことです。
乳腺が肥大しているのではなく、脂肪が蓄積したことによって乳房が発育したものを偽性女性化乳房症といいます。真性女性化乳房症とは異なり、乳腺の肥大はありません。肥満に伴うものが多く、脂肪の蓄積とともに皮膚の余りがあることも特徴です。
※当院は真性女性化乳房症の治療のみを行っており、偽性女性化乳房症に対する手術は行っていません。
片側、あるいは両側の乳房が女性のように肥大化します。そのため、温泉やジムに行くことができない、胸部を隠すために薄着になれない、など日常生活に影響を及ぼすことがあります。
真性女性化乳房症では、痛みを伴うことがあります。
まずは、内服薬の確認、採血、画像検査を行い、原因を調べます。これらの検査で異常が見つかったときは、その疾患の治療を行います。特に異常がない方は手術を行いますが、10代の方は自然軽快することがありますので経過観察を勧めます。
手術は、乳輪周囲の切開より肥大した乳腺組織を切除します。乳腺は薄い被膜に覆われており、脂肪組織と比べて硬いことが多いため、脂肪吸引単独では真性女性化乳房症の治療を行うことはできません。
真性女性化乳房の乳腺は、乳輪の下に楕円形に存在していることが多く、乳腺のみを切除した場合、切除した辺縁が不自然に盛り上がったり、凹んだりすることがあります。つまり、通常は最も高い位置にあるはずの乳輪部分が凹んで、周囲が盛り上がっているという不自然な形態になりかねません。そのため、乳腺の周囲の脂肪も必要に応じて切除、あるいは脂肪吸引することで、自然な形態を作ります。
当院では、他院で女性化乳房症の手術を受けるも、結果に満足できなかった方の修正手術も行っています。
血腫、皮下出血、肥厚性瘢痕・ケロイド、左右差、感覚低下、局所麻酔のアレルギー
女性化乳房症の手術で乳房下や側胸部の皮膚を切開する医療機関もあります。乳房下や側胸部を切開すると手術は行いやすいのですが、手術後のキズ跡がやや目立ちやすいのが欠点です。当院では極力目立たないキズ跡になるように取り組んでおり、基本的に以下の切開で行います。
乳輪が大きく、乳腺の肥大の程度が小さい方は乳輪下1/3~半周程度の切開を行います。乳輪が小さい方や乳腺の肥大が大きい方は乳輪の下半周+補助切開(左右に少し切開を広げます)を行います。こうした小さな切開は手術の視野が狭いことが欠点ですが、目立ちにくいキズ跡になることが利点です。
真性女性化乳房症の手術は単に乳腺を切除するのみではなく、全体のバランスを見ながら脂肪組織も切除や吸引することが必要です。結果的に乳腺組織と同程度の脂肪組織を切除、吸引することもしばしばあり、大きな乳房の方ほど使用する局所麻酔薬の量が多くなります。
しかし、安全に投与することができる局所麻酔薬の量は決まっており、過度の局所麻酔薬の使用は局所麻酔薬中毒などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、真性女性化乳房症の方が全員日帰り手術を受けることができるわけではありません。手術は安全であることが最優先であり、局所麻酔薬も安全な範囲で使用しますので、当院では真性女性化乳房症の日帰り手術の適用を「片側のみの方」、「両側の場合、片側あたり乳房が肥大している範囲が10cm以内の方」とさせていただきます。もちろん目安であり、実際に日帰り手術ができるかどうかは診察の上で判断します。
日帰り手術が困難と判断した方は、大学病院などの全身麻酔を行うことができる施設を紹介します。
女性化乳房症の方から「保険適用で日帰り手術をしてくれる病院が見つからない」という話を聞きます。これにはいくつかの原因がありますが、最大の原因は女性化乳房症の手術は「採算が取れない」ためと言われています。ここから先はお金に関する話なので、不快に思われる方は読み飛ばしてください。
実は、女性化乳房症に対する保険適用の基準は決まっておらず、保険点数(治療費)も明確なものはありません。多くの病院では保険点数として「乳腺腫瘍摘出術 5cm以上 6730点」を適用しています。6730点というのは67300円であり、3割負担の方の自己負担額は20000円程度になります。
「病院にとって67300円の収入になるなら十分ではないか」と考えられる方もいると思います。しかし、その中には医師や看護師、スタッフの人件費、医療機器の購入費用や滅菌費用、縫合針やドレーン、ガーゼ、弾性包帯などの材料費も含まれています。また、女性化乳房症の手術は片側あたり2時間程度かかることもありますし、手術後は厳密な圧迫や安静を行いますので、手間がかかる治療です。そのため、女性化乳房症に対して保険適用で日帰り手術をすると、医療機関は赤字になってしまうのです。職員や通院してくれる患者さんを守ることも医療機関の重要な役割なので、赤字になる治療を積極的にできるはずがありません。そのため、女性化乳房症に対して保険適用で日帰り手術を行う医療機関はほとんどないのです。女性化乳房症は稀な疾患であるため、このことは問題として提起されていませんが、女性化乳房症に悩む方にとっては大きな問題です。しかし、医療費を削減する流れの中で今後保険点数が上がるとは考えにくく、現状が変わる可能性は低いと考えます。
当院は、女性化乳房症に対して保険適用の日帰り手術を行っていましたが、このような背景から継続を断念しました。そのため、女性化乳房症に対して自由診療で日帰り手術をしていますが、費用によって治療を諦める方がいなくなるように一般的な相場の半額程度にしています。保険診療の際も徹底的にこだわった手術をしていましたが、自由診療にした分、これまで以上にしっかりと時間をかけ、最善の仕上がりになるように治療を行っています。
※保険適用外の自由診療です。
項目 | 費用 |
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真性女性化乳房症 | 298,000円 |