
毛細血管拡張症
毛細血管拡張症
毛細血管拡張症とは、皮膚の表面に拡張した毛細血管が見える状態をいいます。全身のどこにでも生じますが、頬や鼻周囲にできやすく、自然に軽快することはありません。原因として、軽微な外傷、寒暖差、アルコールや香辛料などの過剰摂取、加齢、妊娠などが知られており、単純型、樹枝状型、クモ状型に分類されます。
ニキビの炎症、運動、飲酒、緊張などで一時的に血管が拡張したり、顔が赤くなるのは毛細血管拡張症ではありません。
毛細血管拡張症の治療はVビーム IIというレーザーを用います。毛細血管拡張症に対するレーザー治療の効果は高く、多くの方は2~3回の治療で改善が期待できます。レーザー治療は保険適用ですが、治療間隔は3カ月に1度になります。
Vビーム Ⅱは「赤みを取るレーザー」と思われがちですが、これは正確ではありません。Vビーム Ⅱのレーザー光は血管内のヘモグロビンに吸収され、光エネルギーが熱エネルギーに変換し、熱が発生することで血管を閉塞させます。つまり、Vビーム Ⅱは赤いものに反応しているわけではなく、血管内のヘモグロビンに反応して血管を破壊することで効果を現します(実際、Vビーム Ⅱは赤色の刺青(タトゥー)には効果はありません)。
そのため、ヘモグロビンが少ないごく細い血管や、血管を閉塞させるほど十分な熱を発生させることができない静脈瘤のような太い血管には効果が限定的です。
Vビーム Ⅱはパルス色素レーザーと呼ばれるレーザーの一種ですが、初期のパルス色素レーザーより効果、安全性とも格段に高くなっています。特に初期のパルス色素レーザーと比較して大きく改善したのは、サブパルスという方法が開発されたことによります。初期のレーザーでは、1回の照射で1発のパルスのみ(単パルス)であったため、0.45m秒という短い照射時間幅(パルス幅)しか用いることはできませんでした。短いパルス幅では、細い血管病変の治療はできるのですが、太い血管病変には効果がありません。そのため、初期の色素レーザーは限られた病変にしか効果がありませんでした。
しかし、複数のパルスを一定の間隔で連続で発振することで、疑似的に長いパルスとして出力するサブパルスが開発されたことによりパルス幅が0.45~40m秒まで調整することができるようになりました。詳細な機序は割愛しますが、このことによりこれまでは治療できなかったさまざまな血管病変の治療を行うことができるようになりました。
Vビーム Ⅱの有名な合併症として、紫斑があります。紫斑は、血管が破壊された結果、血管から血液が漏出することによって生じます。そのため、血管が破壊されたことを示しているため、紫斑が生じることは必ずしも悪いことではありません。実際に単純性血管腫では紫斑が出るように照射をしますし、本来は炎症後紅斑や毛細血管拡張症も紫斑が出るように照射をした方が治療効果は高いと考えます。しかし、整容的な要素も大きいこうした疾患ではダウンタイムを気にされる方が多く、あえて紫斑になりにくい設定で照射をすることもできます。
以下の画像をご覧ください。
Vビーム Ⅱの照射後に紫斑が出現するかは疾患、パルス幅、フルエンス(単位面積あたりのエネルギー)、照射径などに左右されます。照射径は疾患ごとに固定していることがほとんどだと思いますので(この画像の照射径は10mm)、実際はパルス幅とフルエンスの2つに依存します。そして、パルス幅・フルエンスと紫斑には以下のような関係があります。
①パルス幅が長い方が紫斑は少ない
②フルエンスが小さい方が紫斑は少ない
②の「フルエンスが小さい方が紫斑は少ない」のは容易に想像できると思います。しかし、①の「パルス幅が長い方が紫斑は少ない」はイメージしにくいかもしれません。レーザー治療の世界的権威の先生が、「パルス幅が長い方がサブパルスの間に逃げる熱が大きくなるため、熱効率が悪くなり紫斑が少なくなる」と述べていますが、まさにこの通りなのだと思います。つまり、紫斑は破壊された血管から漏出して凝固した血液であるため、パルス幅が長くなると血管周囲に逃げる熱も大きくなり、周囲組織が広く熱凝固されることにより漏出する血液が少なくなると考えられています。
ただし、パルス幅は破壊する血管の口径を左右する重要な要素であり、紫斑が出にくい長パルス幅の方が優れているというものではありませんので、その点は誤解しないでください。
※治療費用の他に、診察料などがかかかります。
※3歳未満の治療は乳幼児加算(2200点)の費用が追加になります。
※自治体の医療費助成が適用されます(例:東京23区:18歳まで自己負担なし)。
医療費助成の対象年齢や助成費は自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの市区町村にご確認ください。
10cm²まで | 8,100円(3割負担) 2,700円(1割負担) |
10~20cm² | 9,600円(3割負担) 3,200円(1割負担) |
20~30cm² | 11,100円(3割負担) 3,700円(1割負担) |
30~40cm² | 12,600円(3割負担) 4,200円(1割負担) |
40~50cm² | 14,100円(3割負担) 4,700円(1割負担) |