単純性血管腫|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|池尻大橋・渋谷・三軒茶屋

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単純性血管腫

単純性血管腫|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|池尻大橋・渋谷・三軒茶屋

単純性血管腫

単純性血管腫は、毛細血管奇形、ポートワイン母斑とも呼ばれる生まれつきの赤あざです。いちご状血管腫と異なり自然に消退することはなく、成長するにつれて身体の大きさとともに大きくなります。原因ははっきりわかっておらず、遺伝もしません。
無治療の場合、徐々に色調が濃くなり、30~40代頃から徐々に盛り上がってきます。また、顔の病変は軟部組織や顔面骨の過成長の原因となり、口唇や嚙み合わせなどに影響を及ぼすことがあります。そのため、早期から治療を開始することが重要です。

治療法

単純性血管腫の治療はVビーム IIというレーザーを用います。
単純性血管腫は1度のレーザー照射で消えることはなく、レーザー照射を繰り返すことで徐々に薄くなっていきます。多くの方で色調の改善を認めますが、著効(病変が消失)するのは30%程度です。顔や頚部の病変は治療効果が高いですが、四肢(特に四肢末梢)の有効率は下がります。レーザー照射を繰り返しても病変が消失しない方は、治療の過程で効果が頭打ちになり、変化が見られなくなります。Vビーム IIは血管内のヘモグロビンに反応し、血管を閉塞させることで効果を現しますが、細い血管には含まれるヘモグロビンが少ないため治療限界があると考えられています。治療回数は5~15回程度が目安ですが、効果を確認しながら治療回数やレーザーの設定を最適化していきます。
皮膚が薄い幼小児期の方がレーザー治療の効果が高いため、赤ちゃんの頃から治療を開始する方が望ましいです。しかし、レーザー照射中は眼を保護しますし、動かないように体も抑える必要がありますので、当院では早くても首がすわる生後3~5カ月以降に治療する方針にしています。赤ちゃんにレーザーを照射すると聞くと不安になる方もいると思いますが、Vビーム IIは安全性が高く、合併症の割合は比較的低いレーザーなので、治療機会を失わないように相談だけでもお越しください。
0~2歳は安全に体を抑制してレーザー照射を行いやすく、(本人の性格にもよりますが)7歳以降は大人しく治療を受けてくれます。しかし、3~6歳頃は力が強いため抑制することが難しく、記憶も残り、日焼けもする機会が多いため治療をすることが難しい時期です。しかし、全身麻酔は極力避けたいため、長期的な方針を相談しながら治療を行います。また、当然ではありますが、大人になってから治療を開始することもできます。むしろ治療法があることを知らずに成人し、大人になってから治療を希望される方もたくさんいます。
レーザー治療は保険適用ですが、治療間隔は3カ月に1度になります。ただし、必ずしも3カ月に1度の頻度でレーザーを照射する必要はなく、皮膚の状態を確認しながら治療頻度を決めていきます。単純性血管腫は治療の頻度より回数が重要であり、治療を継続することが重要です。
レーザー治療を行い色調が改善したとしても、数年後に再発することがあります。再発率は報告によってばらつきが大きく、一定の結論には至っていません。そのため、長期的に通院することが必要であるため、信頼できる主治医を持つことが重要です。

Vビーム Ⅱの原理と紫斑について

Vビーム Ⅱは「赤みを取るレーザー」と思われがちですが、これは正確ではありません。Vビーム Ⅱのレーザー光は血管内のヘモグロビンに吸収され、光エネルギーが熱エネルギーに変換し、熱が発生することで血管を閉塞させます。つまり、Vビーム Ⅱは赤いものに反応しているわけではなく、血管内のヘモグロビンに反応して血管を破壊することで効果を現します(実際、Vビーム Ⅱは赤色の刺青(タトゥー)には効果はありません)

そのため、ヘモグロビンが少ないごく細い血管や、血管を閉塞させるほど十分な熱を発生させることができない静脈瘤のような太い血管には効果が限定的です。

Vビーム Ⅱはパルス色素レーザーと呼ばれるレーザーの一種ですが、初期のパルス色素レーザーより効果、安全性とも格段に高くなっています。特に初期のパルス色素レーザーと比較して大きく改善したのは、サブパルスという方法が開発されたことによります。初期のレーザーでは、1回の照射で1発のパルスのみ(単パルス)であったため、0.45m秒という短い照射時間幅(パルス幅)しか用いることはできませんでした。短いパルス幅では、細い血管病変の治療はできるのですが、太い血管病変には効果がありません。そのため、初期の色素レーザーは限られた病変にしか効果がありませんでした。

しかし、複数のパルスを一定の間隔で連続で発振することで、疑似的に長いパルスとして出力するサブパルスが開発されたことによりパルス幅が0.4540m秒まで調整することができるようになりました。詳細な機序は割愛しますが、このことによりこれまでは治療できなかったさまざまな血管病変の治療を行うことができるようになりました。

Vビーム Ⅱの有名な合併症として、紫斑があります。紫斑は、血管が破壊された結果、血管から血液が漏出することによって生じます。そのため、血管が破壊されたことを示しているため、紫斑が生じることは必ずしも悪いことではありません。実際に単純性血管腫では紫斑が出るように照射をしますし、本来は炎症後紅斑や毛細血管拡張症も紫斑が出るように照射をした方が治療効果は高いと考えます。しかし、整容的な要素も大きいこうした疾患ではダウンタイムを気にされる方が多く、あえて紫斑になりにくい設定で照射をすることがあります。

効果、ダウンタイムなどを考慮して、レーザーの設定を細かく調整できるのもVビーム Ⅱの特徴です。

Vビームの合併症

  • 紫斑(内出血):血管が破壊されることにより紫斑(内出血)が起こることがあります。多くの場合、1~2週間で軽快します。単純性血管腫の治療では、治療効果を期待して紫斑が起こるくらいの強さで照射することがしばしばあります。
  • 腫れ:照射翌日が最も強いですが、数日で軽快します。
  • 炎症後色素沈着:レーザーによって生じる熱で炎症が起きるため、照射後に色素沈着が生じることがあります。数か月で自然軽快しますので経過観察を行います。
  • 瘢痕:まれですが照射部位に熱傷が起こり、キズ跡になることがあります。

費用

※治療費用の他に、診察料などがかかかります。
※3歳未満の治療は乳幼児加算(2200点)の費用が追加になります。
※自治体の医療費助成が適用されますので、東京23区内にお住いの18歳以下の方の自己負担はありません。
医療費助成の対象年齢や助成費は自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの市区町村にご確認ください。

10cm²未満 8,100円(3割負担)
2,700円(1割負担)
10~20cm² 9,600円(3割負担)
3,200円(1割負担)
20~30cm² 11,100円(3割負担)
3,700円(1割負担)
30~40cm² 12,600円(3割負担)
4,200円(1割負担)
40~50cm² 14,100円(3割負担)
4,700円(1割負担)

症例PICK UP

サーモンパッチ

サーモンパッチとは、正中部母斑と呼ばれることもある生まれつき顔の正中に見られる赤あざです。発生頻度は報告によってばらつきが大きく、5~40%程度の赤ちゃんに見られるとされています。
おでこの正中や眉間、上まぶたの内側などに見られることが多く、多くは1~2歳頃までに自然に消えますので治療を行う必要はありません。色調が濃いもの、2歳頃になっても消えない病変はレーザー治療を検討します。しかし、3歳頃になると力が強くなってきますし、目の周囲にレーザー照射を行うのはリスクが高いため、1~2歳頃までに相談にお越しいただきたいです。
サーモンパッチに対するVビーム IIの効果は高く、多くの方は2、3回程度の治療で目立たなくなります。再発することはほとんどありません。

サーモンパッチ

ウンナ母斑

生まれつき後頭部の生え際に見られる赤あざです。80%以上の赤ちゃんに見られるとする報告もあり、珍しい疾患ではありません。
ウンナ母斑もサーモンパッチと同様に自然消退傾向はありますが、サーモンパッチより消退する可能性は低くなります。しかし、成長とともに髪の毛で隠すことができるようになります。
サーモンパッチと同様にVビーム IIの治療効果は高いですが、髪の毛が薄くなるリスクがあり、目立つ病変以外は治療を行う必要はありません

単純性血管腫とサーモンパッチ・ウンナ母斑は同じ疾患か?

単純性血管腫、サーモンパッチ、ウンナ母斑は同じような見た目をしていますが以下のような共通点と相違点があります。

共通点

・真皮内の毛細血管が拡張している

相違点

・単純性血管腫は徐々に進行するが、サーモンパッチとウンナ母斑は自然軽快傾向がある

・単純性血管腫は全身のどこにでも生じうるが、サーモンパッチとウンナ母斑は生じる部位が決まっている

・単純性血管腫よりサーモンパッチやウンナ母斑の方がレーザーに対する反応性が良い

 

そのため、類似した病態ではあるものの単純性血管腫とサーモンパッチ・ウンナ母斑は異なる疾患であると考えられます。ある教科書に、「単純性血管腫は毛細血管収縮能が先天的に欠落しており、サーモンパッチやウンナ母斑は毛細血管収縮能が未熟である」と記載されていますが、非常にわかりやすい説明だと思います。

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