AGA・FPHL
AGA・FPHL
AGA(AndroGenic Alopecia)とは、男性型脱毛症と言われ、成人男性に発症する進行型の脱毛症です。ジヒドロテストステロンという男性ホルモンが主な原因であり、この男性ホルモンが髪の毛の受容体に結合することで、成長期の髪の毛が退行期、休止期に移行し、髪の毛がしっかり伸びる前に抜けてしまいます。髪の毛の受容体がどのくらい男性ホルモンに反応するかは遺伝によって決まるため、AGAは遺伝する可能性が高いと考えられています。
FPHL(Female Pattern Hair Loss)とは、かつてはFAGA(Female AndroGenic Alopecia:女性男性型脱毛症)と言われていた疾患で、女性型脱毛症のことをいいます。近年の研究により女性型脱毛症はAGAとは異なる機序で発症しているものも含まれていることが明らかになってきました。そのため、女性型脱毛症はFPHLと総称されるようになり、FAGAはFPHLの中の一種であると考えられています。
後頭部や側頭部と比較し、前頭部や頭頂部の髪が細く、少なくなってくるのが典型的な症状です。放置することにより症状は進行し、自然に軽快することは期待できません。 トリコスコピーという拡大鏡を用いることで、髪の毛の太さがバラバラであったり、軟毛化していることがわかります。そのため、早期発見のために薄毛を自覚したときは医療機関を受診することが重要です。
AGAのように前頭部や頭頂部のみの脱毛ではなく、頭頂部を中心として全体的に薄くなっていくことが多いことが特徴です。
FPHLの原因となっている病気が隠れていないかを調べるため、膠原病や甲状腺、亜鉛などを調べることがあります。
AGA・FPHLは進行するほど治療が難しくなるため、早めに治療を開始することが重要です。途中で治療を中止した場合、再度脱毛が進行しますので治療は継続することが重要です。
AGAの原因はジヒドロテストステロンという男性ホルモンが原因ですが、テストステロンというホルモンをジヒドロテストステロンに変換する5α-還元酵素を阻害する内服薬を使います。5α-還元酵素には1型と2型があります。
フィナステリド(プロペシア)とデュタステリド(ザガーロ)が代表的ですが、フィナステリドは5α-還元酵素の1型のみ、デュタステリドは5α-還元酵素は1型と2型の両方を阻害します。そのため、フィナステリドよりデュタステリドの方が発毛効果が高く、デュタステリドはフィナステリドの1.6倍の発毛効果があるとされています。
さらに、血流改善や髪の成長を促進する効果がある5%ミノキシジルという外用薬も治療効果が証明されています。そのため、デュタステリドを内服し、5%ミノキシジルを外用することが国内で承認されている薬剤で最大限の効果が期待できる治療法です。治療効果の判定には半年程度かかりますので、治療は継続することが重要です
フィナステリドやデュタステリドは前立腺の健診などで測定するPSAという値を低下させてしまうため、健診の際には内服していることを伝えて下さい。また、こうした内服薬を使用中は献血を行うことができません。フィナステリドは内服終了後1ヵ月、デュタステリドは内服終了後6ヵ月より献血を行うことができます。
女性はフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)を内服することはできません。そのため、1%ミノキシジルを外用することが、国内で承認されている薬剤で最大限の効果を期待できる治療法です。
やや紛らわしいのですが、ミノキシジルを内服するための製品も販売されています。しかし、利益と危険性が十分に検証されていないため、ガイドライン上は、ミノキシジル内服は「D(行うべきではない)」という評価になっています。また、髪の毛を成長させるために必要な栄養素を含んだパントガールという内服薬が用いられることもありますが、海外の製品であり国内での有用性はまだ十分に評価されていません。