医療機器や技術の進歩は目覚ましく、かつては数日~1週間程度の入院を要した手術も日帰りで安全かつ低侵襲に行うことができる時代になっています。日帰り手術は、海外ではDay Surgery(Ambulatory Surgery, Outpatient Surgery)と呼ばれ、適用範囲がどんどん広がっています。日帰り手術は、支払う医療費が少なくなるだけではなく、通院回数が減る、身体的・精神的な負担が軽くなる、早期に社会復帰できる、手術日を自分で決めることができるなどメリットが多い治療法ですが、日本では広く定着しているとは言えません。人口当たりの病床数が多い日本では、空きベッドを好まない病院側の経営事情なども相まって日帰り手術を行う病院側のメリットが少ないことが原因の1つだと考えられます。つまり、患者さんに入院してもらう方が病院の収入が多くなるため、病院経営上は日帰り手術を行わない方がいいのです。
しかし、以下のグラフをご覧ください。
日本の人口構成と医療費の推移です。
65歳以下の労働人口は割合、数ともに減少し続けているにも関わらず、医療費は増大し続けています。医療費を削減する政策としてジェネリック医薬品の推奨や病床数の削減などが行われておりますが、現在の国民皆保険制度を今後も維持できるはずがなく、どこかで大きな変革が求められることは間違いありません。また、手術を行う急性期病院の統廃合が進むことも予測されています。
そのため、不要な入院と医療費を減少させることができる日帰り手術は今後の日本で重要な治療選択肢になると考えられるため、当院は積極的に取り組んでおり、正確な情報発信に力を入れています。また、これまでは大学病院などでしか行われてこなかった高難度の手術も行っています。そして、日本中のどこでも安全に質の高い日帰り手術を受けることができる医療体制が構築されることを目指しています。