
尋常性疣贅(イボ)
尋常性疣贅(イボ)
ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが、皮膚の小さなケガなどを通じて皮膚に感染することによって発症します。正常皮膚からは感染しないため、触っただけでうつることはありません。ウイルスによるものなので家族内発生も起こり得ます。しかし、感染してすぐに発症するわけではなく、数週間~数カ月かけて現れるため、感染したきっかけがわかることはほとんどありません。
「尋常性」とは「ありふれた」という意味で、イボのことを医学的に「疣贅(ゆうぜい)」といいます。そのため、尋常性疣贅とは最もありふれたイボという意味になります。それくらい尋常性疣贅は多くの方にみられる疾患です。
多くは足のうらや手の指にできますが、顔や四肢にもできることがあります。乳頭状に増殖したイボの表面に点状の出血が見られることが特徴です。この点状出血は皮膚の真皮という部分にある毛細血管が拡張することによって生じます。
顔や手の尋常性疣贅は隆起しますが、足のうらは体重がかかるため隆起してきません。その分、足のうらのイボは皮膚の内側に増殖するため、治癒するまでに時間がかかります。
尋常性疣贅がなかなか治らないことで困っている方も多くいると思います。「1年間通院したけど治らなかった」「液体窒素を当てるだけで他に何もしてくれなかった」「治らないと思って途中で治療を諦めた」というお話を伺うことがあります。尋常性疣贅があっても痛くないし、生活に困ることも少ないので、治療が嫌になる気持ちはよくわかります。しかし、時間はかかりますが尋常性疣贅はほぼ必ず治りますので、治療を中断するのはもったいないと思います。
しかし、残念ながら、現在の医療でも尋常性疣贅を「簡単」かつ「短期間」かつ「確実」に治すことはできません(特に足のうらの病変)。最も一般的な治療である凍結療法(液体窒素)でも多くは数カ月かかります。当院は日本皮膚科学会のガイドラインに従って治療を行っており、以下の治療を組み合わせ、ひとつひとつを丁寧に行うことで少しでも早く治るように取り組んでいます。特に治りが悪い尋常性疣贅は、外科的あるいは炭酸ガスレーザーによる切除やVビームによる治療を行っています。
・最も一般的、かつ効果が高い治療法です。
・1~2週間に1度通院してください(2週間以上間隔が空くと治療効果が落ちます)
・軽めの凍結療法では効果が乏しくなります。ときに水ぶくれや血豆になることがありますが、それくらい強い反応が出る方が効果は高くなります。
・肥厚した角質を削ることで凍結療法の効果を高めます。
・削ることで点状に出血することがありますが、出血はすぐに止まりますので心配する必要はありません。
・削りやすいようにお気遣いいただき予めスピール膏を貼ってくれる方がいますが、硬い方が削りやすいためスピール膏は貼らないでください。
・作用機序は明らかではありませんが、免疫機能を高めることが報告されています。
・成人の方は1日9~18錠内服する必要があります(子供は年齢に応じて内服量を減らします)。
・8週間内服することで50%に有効だったとする報告がありますが、内服薬単独での治療効果は低いです。
・皮膚の細胞増殖を抑制する軟膏を自宅で塗布します。
・治療に伴う痛みがありませんが、効果も高くありません。
・夜寝る前に尋常性疣贅が治った姿をイメージしてから眠ります。
・嘘みたいな治療法ですが、免疫を高めることで効果を現します(効果があったとする論文と効果がなかったとする論文あります)。
・全国各地にイボ取り地蔵があるため、昔から「治ると信じることでイボは治る」と考えられてきたようです。
・他の治療法で軽快しなかった病変に対して行います。
・即効性があり、繰り返しの通院や治療が不要です。
・70%程度の病変は治癒します(30%程度の再発率があります)。
・保険適用外の自由診療です。
・イボの栄養血管を破壊することで効果を現します。
・他の治療法で軽快しなかった病変や指先など痛みで液体窒素の継続が難しい病変に対して行います。
・照射回数は3~5回程度が目安です。
・保険適用外の自由診療です。
他にも接触免疫療法やブレオマイシン局注療法、フェノール外用などの治療法がありますが、これだけ多くの治療法があるということは逆に決定的な治療法が確立されていないということです。しかし、こうした治療を繰り返し丁寧に行うことで、尋常性疣贅はほぼ必ず治ります。
※凍結療法やヨクイニンは保険適用です。
※レーザー治療は保険適用外の自由診療です。
※1カ所、1回あたりの費用です。
炭酸ガスレーザー | 11,000円 |
Vbeam II | 11,000円 |