粉瘤に対するくり抜き法の誇大広告にご注意!|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|池尻大橋・渋谷・三軒茶屋

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医療コラム

粉瘤に対するくり抜き法の誇大広告にご注意!|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|池尻大橋・渋谷・三軒茶屋

粉瘤に対するくり抜き法の誇大広告にご注意!

粉瘤は非常にありふれた疾患であり、多くの医療機関で手術が行われています。粉瘤に対する手術法は紡錘形切除法と「くり抜き法」の2つです。

紡錘形切除法とは、粉瘤の上の皮膚を紡錘形に切除し、皮膚の下の袋を摘出する方法です。くり抜き法とは、パンチと呼ばれる器具で皮膚に35mmほどの穴を空け、内容物を除去した後に袋を取り除く方法です。

当院ではどちらの方法も行っていますが、それぞれに利点・欠点があります。くり抜き法の利点のみを強調しているクリニックがありますが、一般的には以下のような利点・欠点が挙げられます。

 

紡錘形切除法

くり抜き法

利点

・どれほど大きい病変でも切除できる。

・感染したことがある病変や再発病変でも治療できる。

・再発する可能性がほとんどない。

・キズ跡が小さい(1cm以内)

 

欠点

・キズ跡がやや長い。 ※注

・大きな病変(4cm以上が目安)、感染したことがある病変、再発病変には適応にならない。

・再発する可能性がある。 ※注

・太いキズ跡(wide scar)になりやすい。 ※注

ただし、この利点・欠点の表にはいくつかの注意点があります(※注マークをつけています)。まず、紡錘形切除法の欠点であるキズ跡の長さですが、(粉瘤の大きさにもよりますが)およそ粉瘤の0.81倍程度です(つまり、多くの場合、粉瘤とほぼ同じくらいのキズ跡です)。そのため、1cm程度の小さな病変では紡錘形切除法でもくり抜き法でもキズ跡の大きさはほとんど変わりません。また、適切な縫合を行うことができる医師であれば多少キズ跡が長くなることは問題となりません(短いキズ跡でも太いものは目立ちます)

また、くり抜き法の欠点として再発率の高さが挙げられています。くり抜き法では10%程度の再発率があるとする報告もあり、一般的には紡錘形切除法より再発率が高いとされています。しかし、この再発率の高さはくり抜き法が悪いのではなく、手術の適応に問題があると考えます。一般的に、切開を要するほどの炎症の既往があるもの、手術後に再発したものはくり抜き法の適応になりません。しかし、くり抜き法後に再発したものはこうした粉瘤に対してもくり抜き法を行ったためではないかと思います(あるいは手術が相当に下手か)。実際、くり抜き法後に再発して当院を受診される方はほとんど同じクリニックで治療を受けています(そのクリニックではくり抜き法を強く推奨しています・・)。紡錘形切除法だろうがくり抜き法だろうが適切な適応と手術を行えば粉瘤が再発することはほとんどありません。そのため、粉瘤の手術後に同じ部位に再発した方は医療機関を変えた方がいいと思います。

また、くり抜き法後のキズ跡は太いもの(wide scar)になりやすいとされています。これもくり抜き法が悪いのではなく、くり抜き法後の縫合に問題があると考えます。一般的に紡錘形切除法でもくり抜き法でも極力目立たないキズ跡になるように真皮縫合と皮膚縫合という2層で縫合します。しかし、くり抜き法後は真皮縫合をしない、あるいは縫合さえしない医療機関もあるようで、そうしたキズ跡は太いものになりやすい傾向があります(感染した粉瘤を切開したときはもちろん縫合しません)

結局、「くり抜き法だけが一方的に優れている術式ではない」、「紡錘形切除法もくり抜き法も欠点はあるが適切な手術を行うことができる医師あれば欠点にはなりくにい」ということです。月並みな結論ですが、形成外科専門医か皮膚外科を専門とする皮膚科専門医が所属する医療機関を選ぶようにしてください(くり抜き法の利点のみを強調しているクリニックには行かない方が無難です)

藤木政英

監修 藤木政英(医学博士)
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科 院長

皮膚科学と形成外科学の両面から最善の治療を提供しています。
これまで大学病院、虎の門病院、国立がん研究センターなど、第一線の病院で勤務してきた経験から、医学的根拠に基づく誠実な医療を行うことを心がけています。特に形成外科・皮膚外科の日帰り手術、レーザー治療に力を入れており、短時間で終える治療は初診時に行うことができる体制を整えています(詳しくはホームページをご覧下さい)。

皮膚や形態、機能の病気で悩む方に、「より良い人生を送るための医療」を提供するためにクリニックひいらぎを開院しました。

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