ニキビ跡の治療後にフィブラストスプレーを用いることに対する私の考え|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|目黒区・池尻大橋駅

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医療コラム

ニキビ跡の治療後にフィブラストスプレーを用いることに対する私の考え|クリニックひいらぎ皮膚科形成外科|目黒区・池尻大橋駅

ニキビ跡の治療後にフィブラストスプレーを用いることに対する私の考え

クリニックひいらぎ皮膚科形成外科の藤木政英です。
最近、ニキビ跡の治療(サブシジョン+ヒアルロン酸+炭酸ガスレーザー)後にフィブラストスプレーを用いることがSNS上で流行っており、その妥当性についてしばしば質問されます。本来、評価が定まっていないものに対して医師が医学的な知見を発信するときは、第三者の評価や査読を経て論文という形にするのが一般的です。この発信は第三者の評価や査読を受けていませんので、あくまで私見として発信している(公的に認められた内容ではない)ことをご了承ください。
そもそもフィブラストスプレーとは、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor: bFGF)を含む製剤であり、線維芽細胞や血管内皮細胞などのキズの治癒に関与する細胞の力(増殖能、遊走能)を高め、血管新生や肉芽増殖を促進する作用があります。その結果、キズが治癒するまでの期間を短縮することができ、現時点では褥瘡と皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)に対して使用することが認められています。 また、単にキズを早く治癒させるだけではなく、瘢痕組織の質を改善させることも報告されています。具体的には、瘢痕組織が柔らかくなること、色素沈着が少なくなること、肥厚性瘢痕になるリスクを下げること、などが挙げられます。つまり、瘢痕を形成するような深い(特に真皮深層より深い)キズに対しては、フィブラストスプレーを用いることでキズが目立ちにくく治る可能性があります。
通常、炭酸ガスレーザーで瘢痕形成が起こるほど正常皮膚を深く削ることは少なく、フィブラストスプレーを用いることはまずありません。しかし、ニキビ跡は繰り返す炎症によって正常皮膚がもともと瘢痕組織に置き換わっています(もちろん程度の差はあります)。結果として、ニキビ跡に対して炭酸ガスレーザーを照射するということは、部分的に瘢痕組織を蒸散していることであるため、削った部分は部分的に瘢痕形成を起こして治癒しています。そのため、特に瘢痕形成の強いニキビ跡に対する炭酸ガスレーザー照射後にフィブラストスプレーを使う意義を理論上は否定することはできません。実際、1例だけの報告ですが、アイスピック型のニキビ跡に対して、フィブラストスプレーを使用することでニキビ跡の著明な改善があったとする論文があります(J Dermatol, 2018)。
その一方で、フィブラストスプレーを用いたとしても、キズの湿潤環境を維持するために軟膏や創傷被覆材の併用は必須であり、キズが治癒したら速やかにフィブラストスプレーの使用は中止する必要があります。また、保険適用外の使用であり、仮に健康被害が起きたときに補償などを受けることができませんので自己責任での使用になります。さらに、しこりや皮膚の盛り上がりを引き起こす可能性があるため絶対に注入して使用してはいけない、投与部位に悪性腫瘍や過敏症の既往がある方は用いてはいけないなどの注意点もあります。また、長期的な効果に対する詳細な研究はありません。
結論として、「ニキビ跡に対する炭酸ガスレーザー照射後にフィブラストスプレーを使う意義を理論上は否定することはできない。しかし、世界中で使用経験が乏しいため、長期的な効果や予期しない合併症が生じる可能性については不明であり、現時点では使用は控えた方がいい。」というのが私の意見です。

藤木政英

監修 藤木政英(医学博士)
クリニックひいらぎ皮膚科形成外科 院長

皮膚科学と形成外科学の両面から最善の治療を提供しています。
これまで大学病院、虎の門病院、国立がん研究センターなど、第一線の病院で勤務してきた経験から、医学的根拠に基づく誠実な医療を行うことを心がけています。特に形成外科・皮膚外科の日帰り手術、レーザー治療に力を入れており、短時間で終える治療は初診時に行うことができる体制を整えています(詳しくはホームページをご覧下さい)。

皮膚や形態、機能の病気で悩む方に、「より良い人生を送るための医療」を提供するためにクリニックひいらぎを開院しました。

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